入試ガイド

学生インタビュー 2014

山浦真衣・田邉裕介 (3年) 「他者」との信頼を築くこと 所属:文化人類学スタジオ・松本ゼミ

聞き手:松本尚之(人間文化課程准教授)


えー、今日は受験生向けの課程の紹介ということで二人に来てもらいました。人間文化課程の学生としてのお二人の大学生活などを聞かせてください。
さて、最初に人間文化課程で二人がどんなことを学んでいるか聞こうか。とりあえず、課程の売りになっているスタジオについて。といっても、二人とも僕のスタジオに所属しているから、何やっているか知っているのですが(笑)。まあ、知らない人向けに君たちのスタジオでの研究活動について話してください。

山浦:私たちが所属する文化人類学スタジオでは、身近な異文化を調査対象として、一人一人がフィールドワークを行っています。自ら問いを立て、それを知るためにはどこへ行き、誰に話を聞きに行くべきなのか、アポ取りからはじまって調査の最後の最後まで、やるべきことを自分で考え、行動し、そして何かを得て学んでいくことが特徴です。

具体的な調査テーマを教えてください。

山浦:私は、「人と住まいの関係」をテーマに調査を行っています。このテーマに興味を持ったのは、2年のスタジオで行った「シェアハウス」 のグループ調査がきっかけです。家族でもない、血のつながりのない人々が、共同生活をしていく中で、数々の「つながり」を元に、関係が生まれていく様子にとても興味をもちました。今は、シェアハウスのような同世代のシェアする暮らしだけでなく、多世代の交流する住まいの人々の暮らしや様子を知りたいと思い、多世代型の「コレクティブハウス」 を調査対象として研究を進めています。

実際の調査では、どんなことをしている?

山浦:いくつかのコレクティブハウスを廻りましたが、現在は東京都内にある一件に対象を絞って調査を行っています。近日オープン予定で準備をしているところなのですが、運営会議に参加させていただき、今までで一番深くその「家」に関わっている気がします。調査としては、運営会議に参加したり、家作りに携わっている人たちへのインタビューを行ったりしています。

シェアハウスやコレクティブハウスは僕が学生の頃には聞かなかった居住形態だなぁ。人間関係に関する意識の変化が住まいのかたちにも影響を及ぼしているのだろうね。

田邉君は?どんな調査をしているか紹介してください。

田邊:僕は「セクシュアルマイノリティ」について調査しています。もともと「社会的マイノリティ」に興味があったのですが、海外に行ったとき、同性同士が手を繋ぎながら買い物をしている様子を見かけ、どうして日本ではそうした光景が見られないのか、どうしてゲイやレズビアンは否定的に語られることが多いのかと疑問を抱いたことがきっかけです。男女間の恋愛を前提とした異性愛主義が強い日本では、セクシュアルマイノリティは「例外」として差別の対象になることもあります。

セクシュアルマイノリティの認識は、文化によって大きく異なるからね。日本の場合、むしろ近代になって不寛容になったとも言われている。しかし、なかなかアプローチが難しいと思うんだけど、具体的にはどうやって研究しているの?

田邊:自らセクシュアルマイノリティ支援団体に所属しボランティアをしながら調査を進めています。忙しくても週に1回は参加するようにしています。長期的な調査になるので、やはり信頼関係を築くことが何よりも大事だと思うからです。もちろん、毎回新たな発見があるわけではありませんが、周囲との信頼関係を築きあげることで、リアルな実像を目の当たりにすることが出来るからです。また、セクシュアルマイノリティの方にインタビューをしたり、イベントやパレードに参加したりすることで、文献調査だけでは分からないものを大切にしながら、多面的な調査をするように心がけています。

実際、調査をやってみた感想はどう?

田邉:支援団体へのアプローチが難しかったです。やはり、偏見を持っている人もいるので、調査を断られてしまうだろうと思っていました。そのため、いくつもの文献を読み、しっかりと調査の意図や熱意を伝えたことによって調査の許可を得ることが出来たのだと思っています。また、「ゲイ」「レズビアン」と聞くと、メディアなどの影響によって異性愛者とはかけ離れているような存在に思う人もいると思います。僕も最初はそのように思っていたので、異性愛者とセクシュアルマイノリティの「違い」を見つけ出そうとしました。しかし、その違いは「恋愛の対象が異なる」だけなのではないかと、調査をするについて判明してきました。このように、「他者」だと思っていた人物が思った以上に自分と近い存在であると気が付いたときに、文化人類学の面白さがあるのではないかと思っています。

山浦:私は、調査をしていくにつれ、自分も「家」の子の一人になっていくような感じがとても嬉しかったです。はじめは、その「家」とまったく関わりのない私がいきなり飛び込んできて、戸惑いを隠せない人々も見受けられたように感じます。しかし、通い続けていく中で、徐々に声をかけてくれる人や名前を呼んでくれる人が増えていき、今では私もその「家」の古株の一人と認めていただけるまでになりました。人々の信頼を得てこそ、深みのある調査ができるということを、身にしみて実感しました。

じゃあ、ゼミ・スタジオ以外では、課程で今までどんなことをしてきた?

田邊:人間文化課程には「グローバル・スタディ・ツアー」というプログラムがあるのですが、それを利用して去年(2013年)一週間、フィリピンに行ってきました。マニラ大学の学生と交流したり、日系企業やバターン原子力発電所、ゴミ山と呼ばれるパヤタス地区を訪問したり、ホームステイを経験したりしました。

国際社会学が専門の小ヶ谷先生が企画しているツアーだね。行ってみて、一番印象に残ったことは?

田邊:一番思い出に残っていることは、「格差」です。その格差は、先進国「日本」と途上国「フィリピン」という格差であったり、マニラ大学、あるいは教室や街中、フィリピン国内における格差でもあったりもします。ソルト・パヤタスでは、スカベンジャーと呼ばれる子供たちが、山のように積み重ねられたゴミの中からなんとか金目のものを探そうと、一本の棒を使って働いている姿に胸が痛みました。「社会的マイノリティ」について研究しようと思う、一つのきっかけとなる出来事でした。

山浦さんも、スタディ・ツアーに参加していなかったっけ?

山浦:私は大学1年生の春休みに、中国の大学に3週間滞在し、中国語を学ぶ短期派遣プログラムにサンカしました。スタディ・ツアーとはまた異なるプログラムで、語学の授業を集中的に受けるものです。

中国語の授業の他には?せっかく現地に行ったのだから色々経験してきた?

山浦:向こうの大学の日本語学科専攻の生徒さんたちの授業に参加したり、互いの文化を説明し合うプレゼンテーションを行ったりして、学生同士の交流も深めました。伝統芸能の京劇の鑑賞・体験会なども行いましたし、中国文化を知る貴重な機会の一つになったと思います。中国語が上達したこともうれしいですが、何よりその地の文化に親しみを感じるようになるなぁと思いました。この時の中国滞在がはじめての海外渡航でしたが、飛び込んでみて本当よかったです。

田邊:そう。スタディ・ツアーを終えて、やはりメディアや文献などの間接的な情報ではなく、実際に目で見て感じる直接的な情報が大切だと感じました。もちろん、自分の目で見た光景が全てではないし、それには限界があるけれども、少なからず価値があると思います。そう考えてみると、フィールドワークってとても大切なんだと思います。

最後に二人から、受験生に一言お願いします。

田邊:そうですね…。大学受験、とても辛かった思い出があります。どんなに勉強しても模試の点数は下がってしまったり、自分自身との戦いだと理解していながらも周りのことを気にしてしまったり。そんなとき中学時代の恩師が言った「どこに行くかではなく、そこで何をするかが大切」という言葉が頭に浮かんできました。未来は自分の手で切り開くことが出来ます。自分を信じて、そして明るい未来を思い描いて、最後のさいごまで頑張ってください。ささやかながら応援しています。

山浦:大学という場所には、たくさんの選択の自由が詰まっていると私は思います。授業の科目を選ぶのはもちろん自分自身ですし、留学したり、ボランティアをしたり、サークルに入ったり、バイトをしたり・・・今までに経験したことのないこと、興味関心のあること、やってみたいことなどに挑戦する機会や時間を、全員が手にすることができます。得られた時間を活かし、機会や選択するのは自分自身。大学生だからこそ選べる限りない自由を、悔いの残らないよう選択し、そしてたくさんの思い出を作ってください。みなさんにお会いできるのを楽しみにしています。

インタビュー:2014年1月7日
撮影:李芸知(人間文化課程3年)

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