入試ガイド

学生インタビュー 2013

徳永綸 (3年) 渦の中に飛び込んで 所属:編集批評スタジオ/現代芸術スタジオ

聞き手:平倉圭(人間文化課程准教授)


こんにちは。

徳永:こんにちは。よろしくお願いします。

えーと。今日はですね。受験生に向けて、「人間文化ってどんなところ? どんな人がいて何を考えてるの? 何をする人がいるところ?」ということを伝えたいと思ってインタビューをお願いしました。ではまず、自己紹介をお願いします。徳永さんは何をしてる人ですか。

徳永:何をしてる人!?……そうですねー、現代の舞台を楽しむための勉強をしているつもりです。こういうとふざけてるように聞こえるかもしれませんが……。3年になってからは特に、哲学の領域についてゼミで学ぶことが多いですが、それが舞台について考えるためのエッセンスになっています。最近は別役実さん ※1 の作品に注目して勉強したり、池袋で行われる国際舞台芸術祭の批評集団 ※2 みたいなのに加わったりして学んだりしました。要するに舞台芸術について考えていたい人です。

※1:劇作家。日本における不条理演劇の第一人者。1937年生。
※2:2012 blog camp in F/T。フェスティバル・トーキョーの関連企画として開催された。

おお。分けてきこうかな。舞台について考える、って具体的にはどういうこと?

徳永:基本的には「なんでこの公演はめちゃくちゃ面白かったんだろう」とか「ここが面白かった」「ここがいまいちだったからこうしたらもっと面白くなりそうだ」みたいなことを指針にして考えてますね。そのために物語の構成や演出や俳優や美術などなど、興味をひいた対象について、どうなってるんだろうと考えて……っていうと答えにならない(笑)。観察をしています。観察。

なにか例を挙げてもらえる?

徳永:例えば……この間観た『はぐれさらばが“じゃあね”といった』 ※3 という芝居では時間の使い方が面白かったので気になりました。太宰治が原作の芝居だったんですが、小説のフィクションの部分と、太宰治自身の像を描くフィクションの部分とが入り乱れて展開されてて。今はもう亡くなってしまった方じゃないですか。太宰は。なのに小説の人物は生き続けるし、そこから今の人は太宰の像を想像したりする。今生きてる私とかと、生きていない人の距離みたいのが感じられて面白かったなあ。時間に関して考えることはけっこう多いですね。時間を縮めたり伸ばしたりする作品っていっぱいありますけど、普段の生活で時間には逆らうことができないから、やっぱり考えちゃう。あと最近よく考えるのは、主体性の欠落に関して。三野新さんって方の作品に最近興味あるんですけど、そこに俳優がいるんだけどいないみたいに思えるみたいな。説明しづらい(笑)。幽霊を舞台上にあがらせるみたいなことをしてるように感じてて、実際この間はゾンビと幽霊を題材にして作品作られてましたね ※4 。まあ結局は作品それぞれで違いますけど、舞台について考えるっていうのは、私の場合時間とか幽霊とか、そういう舞台上から感じられる要素について考える、ってことですかね。

※3:ピチチ5公演『はぐれさらばが“じゃあね”といった』 2013年6月28日~7月7日[Link]。
※4:三野新写真展+公演『ZG』2013年6月24日~7月1日[Link

なるほど……舞台は生身の人間がリアルタイムで演じるものだけど、そこに異なる時間性が入り込むことで、「いま・ここ」が分裂したり、多重化したりするわけだね。人間文化は「スタジオ教育」が特色になっているけど、徳永さんはスタジオでも舞台のことを扱っているの?

徳永:そうですね。私は2つのスタジオを履修させていただいてて、ひとつは編集批評スタジオ。でもう一つが平倉先生の現代芸術スタジオ。編集批評では、文章を書くときに必要となる基礎知識を学んだうえで実際に冊子をつくったりしてるんですが、ゼミと連動することでどんどん専門性が高くなってきて、研究そして冊子編集をするというハードなことになってます(笑)。文章校正の仕方や読みやすい文章の作り方について学べたのは大きくて、舞台についてはじめて文章を書いたのも一年のスタジオがはじめてのことだったかなあ。すごく役立った。さっきちょっと言いましたが、今は別役実さんの戯曲について冊子をまとめています。別役実さんに関してそういう本ってこれまでなかったと思うので、かなりやりがいがあります。現代芸術スタジオでも作品批評の文章を書くことがあって、批評に関しては編集批評スタジオより影響を受けています。「批評っていらなくない?」って言ってる先生の下で教わると、本当に必要な記述が何か考えさせられます。ほんと酷評されますしね(笑)。で、こっちのスタジオでは実際に作品を制作しなければならないので、手を無理矢理でも動かす必要にかられます。そうすると今までなかった思考とかが出てくるので、結果的に新しい思考法というか、考えの選択肢がどんどん増えてくるんですよね。このスタジオという場で作品制作をやる意味は思考を止めないことかなーと思っています。そのへんの目的が美大とかとは違うのかな。よくわからないけど。今は短編演劇をつくってます。で、思考の幅を広げたり実際に文章を書くことは、さっき言った舞台について考える、ということにダイレクトに影響していくんです。なので舞台について直接勉強しているわけではないけど、結果的には関係していますね。おおいに。

半期で本を1冊制作し、批評を書きまくり、自分の演劇もつくるという……過酷でないわけがない(笑)。学期末講評も楽しみです。さっき「ゼミでは哲学の領域を…」と言っていたけど、どんなことを?

徳永:実は今まで私は哲学を避けていたんですよね。よくわからなそうで。ただ、平倉先生の下で勉強したいなと思ったら哲学が不可避だった(笑)。今は身体感覚の拡張に関する本をゼミで読んでいますが、哲学用語がいっぱい出てくるので、それを調べてちょっとずつわかるところを増やしていっています。そうすると、哲学用語を通し、身体感覚の拡張についての本を通し、ダンスとか演劇の身体性を考えることにつながりますね。哲学の領域を勉強してるというか……まだ哲学1年生レベルですね。こういうことを考えている人がいるっていうのを知っていくという感じ。ただ舞台につながるとわかると面白いと思えてきました。夏休みは時間とって名著などを読んでみようかなーと思っています。まだその段階!

哲学が身体的な理解や実践につながるといいなと思っています。今ゼミで読んでる本は、神経系の話と人工知能の話がばんばん出てくるから、身体の実感に落としにくいけど(笑)。徳永さんはジャズ研の部長もやってるんだよね。

徳永:はい。モダンジャズ研究会の。「会」なのに「部」長。

(笑)ジャズ研ではどんな活動を?

徳永:私はアルトサックスをやっていて、日頃は部員とセッションして遊んだり、たまにライブやったりって感じですね。あと半年前ぐらいに国大のビッグバンドサークルにも入ったんですけど、そっちは今年初めて本選である全国大会に出場がきまったので、練習の日々です。

全国大会! すごいなあ。どうりで忙しそうなわけだ……。来週の哲学ゼミ発表では、セッションする身体の分析もしてくれるとのことなので、期待しています。多種多様な活動が、けっこうからみ合ってるよね。それでは、最後になるけど、後輩へのメッセージをお願いします。

徳永:うーん、この課程はよく「自主性が重んじられる」とか「いろいろ学べる」とか言われてると思うんですが、実際それはとても難しいことですよね。利点なのかよくわかんないし(笑)。でも、なんとなくでもこの課程に惹かれたのならば、各教員の専門性や美大への羨望やら、謎の実践性などわけのわからんものたちが渦巻いた中にただ飛び込むのもありだと思います。迷子になったのちに、譲れないものができたり、譲れないものって無いな、とかそういうのがわかるわけですから。ちなみに私ははいってよかったと思ってます。考えていることに沿った勉強ができるし、教わりたいと思える先生がいてくれたから。入って迷子になっちゃったら、とりあえず本読んだり映画とかを大量に観てればいいと思います。損しないし。お金があったら舞台とか観てればいいと思います。……こんな無責任なアドバイスで大丈夫なのかな(笑)。とりあえずこんな感じで。

インタビュー:2013年7月12日
撮影:稲塚千洋(人間文化課程3年)

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