人間文化課程とは

課程長からのメッセージ(追記あり)

室井 尚


皆さん、こんにちは。

人間文化課程長の室井尚です。

いま、日本という国は大きな転機を迎えているのだと思います。

転機を迎えているという意味は、今までのやり方ではもううまくやっていけなくなるという意味です。みんなそう言うと曖昧に頷くのですが、本気でそう思っている人はどれだけいるでしょう?

皆さん、大学に入ったら、サークルで友達を作り、アルバイトで貯めたお金で旅行や飲み会を楽しんで、あとは適当に単位を集めたら就職活動をして、うまく行けば一生正社員で働ける安定した職場に潜り込む――まだ、そんなのんびりしたことを考えてはいませんか? 国が転機を迎えるというのは、もうこういう決まり切ったコースで人生を生き抜くことができなくなるということです。

せっかく大学に入るのに、そんなのは嫌だ。テニスやダンスをやりたい。まだ、逃げ切れる時間は残っているはずだと思っているあなた。どこか別の大学の別の学部に行って、卒業してから「こんなはずじゃなかった!」と後悔してください。

逆に、「面白えじゃねえか! この野郎!」と思ったあなた。あと残り2回の入試で潰されることになっているこの人間文化課程に是非チャレンジしてみてください。乱世を楽しく、痛快に生き抜くための様々なスキルと活力を人間文化課程は提供します(但し、あなたが自らそれを望むなら…ですけど)。

東日本大震災の年に誕生した人間文化課程はあと2年で廃止が決まっており、偽りの安定路線を好む上述のような人たちが受験しにこなくなるので、もしかすると数学や理科が苦手なあなたにもチャンスかもしれませんよ! ぼくたちは少しくらいセンターの点が悪くても、活きのいいやる気のある学生諸君を熱烈に求めています。

「そんなこと言って、自分たちが潰されてんじゃねえ!」と突っ込みを入れたくなるかもしれませんが、そうではありません。組織が潰されたからと言って、ヒトは潰れません。人間文化課程が廃止になっても、ここでいま様々なことに挑戦している教員たちや在学生たちはどこかでしたたかに生き延びるのです。但し、人間文化課程の最後の学生が卒業するまで、ぼくたちはこの組織を責任持って維持していきますので、けっして取り残されることはありません。安心してください。

問題は組織ではありません。ヒトです。そして、ヒトが何万年、何千年もかけて蓄えてきた文化や歴史の知識とスキルを身につけていれば、何も怖くはありません。ヒトこそが本当にかけがえのない「資源」なのです。国や組織にいつまでも頼っていないで、自立して生き延びることのできる個人を育てていくのが人間文化課程の教育です。

「グローバルスタディーズ・ツアー」や「横浜都市文化ラボ」、「もっと横浜プロジェクト」、学生たち自身の運営による「人間文化祭」などの学外や海外との交流のアクティビティ、プロジェクト型教育である多彩なスタジオ科目––その他、このウェブサイトをご覧になればこの課程のユニークさを分かってもらえるでしょう。

何かよく知らないですけど、大学研究家と称している山内太地という人もTwitterで次のように呟いてくれています。

山内太地(大学イノベーション研究所)‏‪@yamauchitaiji‬
横浜国立大学の教育人間科学部人間文化課程が、文部科学省から廃止を勧告されています。ここは人文系のなかでも屈指の素晴らしい教育をしているので、なんとか残ってほしいのですが (2014.5.15)

こんな外からの応援だけではなく(これはこれでありがたいですが…)、直接在学生たちの声を、ここにある座談会などを通して聞いてみてください。人間文化課程がやっている教育はけっして間違っていないことがお分かりになるでしょう。

それじゃなぜ、廃止されてしまうのでしょうか?

前回(2014年夏)のオープンキャンパスに来てくれた方はご存知だと思いますが、まだ何も決まっていなかったにもかかわらず、人間文化課程は次の入試限りで廃止され、平成28年入試は行わないという発表が大学執行部からなされました。新学部を作る時にも、学部の中身を改組する時にも、こんなに早くから発表が行われるのはきわめて異例です。それは現在の政権になって「国立大学のミッションの再定義」という政策が取られるようになり、さまざまな圧力が大学にかけられているという状況下での出来事でした。

ところが、ある事情でこの「人間文化課程の廃止」という決定は一年繰り延べになることになりました。その理由をあまり詳しく書いてしまうと傷つく人たちも出ますので、ここは黙っておいてあげることにしましょう。どうしても知りたい人は夏のオープンキャンパス(だから、もう一回やるのです!)の折にでも直接スタッフに聞いてみてください。こうしてぼくたちが望んでもいないのに政府=文部科学省に押し付けられた「閉店大売り出しセール」がこれから2年間続くことになったわけです。

上にも書いたように、たとえ人間文化課程がなくなっても、ぼくたちはしぶとく生き残っていきます。ですので、新しい組織が生まれた時にそれがどんな形で生き残ったのかはわかるはずですので、高1以下の人たちも是非安心して横浜国立大学に来ていただきたいのですが、とりあえず教員数約30名のフルパワーを人間文化課程として発揮できるのは、平成28年入試で入ってくる学年までになります。残り物に福があるという感じの大売り出しセールになるかどうかは皆さん次第ですが、けっして後悔はさせないつもりです。

今回はなりふり構わない、率直すぎるほどのメッセージになりましたが、それはぼくたちが全然めげてはいないということ、そして自立し、さまざまなスキルや教養を備えた個人としての学生を育てたいとずっと強く願っているということを皆さんに伝えるためです。

経済と効率性ばかりを追い求め、文系教育をなおざりにしようとしている国家と、ぼくたちが推し進めている国家や組織に頼らない自立した個人を育てる教育のどちらが正しかったのかは、何十年か後にはっきり分かることになると思います。それを皆さんと一緒に証明してみたいと思っています。

ですので、人間文化課程に来てください。このメッセージを読んで入学しましたよ、という皆さんの顔を見ることができる日を心から楽しみにしています。
(2015年1月2日)

#追記

まあ、来るかなあと思っていたら、やっぱり学内から軽くクレームがついた。大したことではないけど、要点は次の二点である。

ひとつは、室井さんは課程長で(課程長は一応管理職。手当は安いけど)、ここは人間文化課程の「公式ホームページ」なのだから書き方に気をつけて下さいというもの。これに関しては、ぼくたちは世の中の変な噂や偏見や誤解に流されて、優秀な学生たちがうちに来てくれなくなることがないようにできるだけ率直に正直にメッセージを伝えたいし、そのためには型通りの形式的なメッセージでは伝わらないのではないかということで、突っぱねることにした。

もうひとつは、「あと二年で廃止」、「あと二回の入試で廃止」と何度も書いたことが社会に誤解を招きかねない。その後の組織改編の中身が固まり、大学設置審議会の審査に通らなければ二年で廃止なのか、三年で廃止なのか、あるいは継続できる(?)のかはまだ分からないというのが大学の公式見解というものだ、というクレームである。

確かに表向きはそうなので、これに関しては今書いているこの「追記」をもって答えることにした。はい、その通りです。確かに二年で消えると完全に決まったわけではありませんよ。不正確なことを「公式ホームページ」に書いてしまって申し訳ありませんでした。

まあ、大学には色々な人がいるけれど、横浜国立大学は教員や学生の自由を尊重してくれるいい大学ですので、こんなところで納得してくれるとぼくは信じています。だから皆さん、心配しないで入学してきて下さいね。それに、もちろん本当は二年で潰れない方がいいわけだしね。

(2015.1.21追記)

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